テレワークマネジメントの課題とは?成功するための3つのポイント

最終更新日:2022年7月15日

新型コロナウイルス感染防止対策として、2020年春から多くの企業でテレワークの導入をせざるを得ない状況になっています。

東京都が実施した2021年1月の「テレワーク導入率調査結果」によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は57.1%。緊急事態宣言期間中のテレワークの実施回数は、週3日以上が約6割を占めています。しばらくは収束しないことが予想されるため、今後も継続的にテレワークを実施していく企業は増えるでしょう。

参考:東京都「テレワーク導入率調査結果」https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/01/22/17.html

 

そんななか、「部下の動きが見えづらい」「意思の疎通が取れにくくなった」など、テレワークならではのマネジメント体制の課題が浮き彫りになってきました。ここでは、テレワークがもたらす課題と、円滑に進めるためのマネジメント術をご紹介します。

テレワークの課題はツールの導入だけでは解決しない

チャットツールやZOOM会議に慣れた日本人

テレワークが広まった当初、多くの企業で取り急ぎ対応に追われたのが、ビジネスチャットツールやオンライン会議システムの導入です。実は筆者の会社でも昨年のコロナ渦からzoomを利用開始しました。

いざzoomで会議を始めようと思ったら入って来れないメンバーがいてなかな開始できなかったり、マイクオフで声が聞こえないなどのトラブルが多々あったものです。しかし、数カ月も経過すると多くの人がチャットやzoomの操作に慣れていきました。

今では、「こちらの資料、映ってますか?」というセリフが板についた方は多いのではないでしょうか?(笑)その一方で、明るみになってきたのが「マネジメントに対する課題」です。

参考:【テレワークじゃなくても知っておきたい】 今すぐ使えるコミュニケーションツール10選|無料あり

 

テレワークマネジメントにおける3つの課題

課題(1):「アイツちゃんと仕事しているんだろうか?」疑惑

上司や同僚の目がないテレワーク環境下では、「従業員がサボっているのではないか」という不安がつきまとうもの。

チャットに返事がないけど、まさか寝てるんじゃ…
YouTubeばかり観てるんじゃないか?

と、ついつい疑ってしまう方も多いのではないでしょうか。

現にHR総研が実施したテレワーク実態に関するアンケートによると、テレワークを実施して直面した課題としては、「労働実態を把握しにくい」が46%で最多でした。自宅での仕事はオン・オフの切り分けが難しく、集中力が途切れたり、目標とやりがいを持って働いたりできなくなるケースも多分にあります。

そのため、企業は管理体制を整えなければなりません。だからといって勤務中にずっとzoomを繋いでいるような監視に近いものになると、従業員のストレスは増えてモチベーションは下がります。労働実態をいかに把握するかはテレワークの成功を左右する大きな課題といえるでしょう。

 

 

課題(2):部下の異変に気づきにくい

次に大きな課題が、部下とのコミュニケーションの減少です。オンライン会議やチャットでも会話はできますが、ちょっとした会話などはしづらくなります。日頃から雑談を好む人は、チャットでも気軽にコミュニケーションをとりやすいですが、普段から一人で頑張るタイプや、まだ職場に馴染んでいない新入社員の場合だと、助けを求めづらく、一人で抱えてしまう可能性があります。

オフィスで顔を合わせていれば、相手の様子を見てタイミングを図って話しかけることもできますが、テレワークではそうもいきません。そのため、上司にしてみれば部下の進捗状況や悩んでいることがないかが見えにくく、部下にとっては、不明点や困っているときにすぐ声をかけづらい、という状況が生まれます。

そもそも、チャットなどの文字でのコミュニケーションは相手の本位が見えにくいため、指示が明確に伝わらなかったり、どうしても誤解や孤独感が生まれやすくなります。こうした状況が続くと、仕事に対するモチベーションが下がるだけでなく、企業の組織力の低下にもつながってしまいます

 

 

課題(3):テレワークでの評価方法

通常、人事評価は「成果」と「プロセス」の両面で評価します。多くの企業が交代制で週に1~2日というテレワーク体制を採用しているため、オフィスで働いているときと同じように、従来通りの人事評価制度を適用している企業がほとんどです。

しかし、テレワークでは業務のプロセスは見えない部分が多くなるため、目に見えやすい成果や実績だけをもとに評価をする、いわゆる成果主義に偏ってしまう傾向があります。成果主義は、売上高や顧客訪問件数のように成果を数値化できる営業部門には適していますが、企画・開発など達成度を短期的に数値化することが困難な業務もあります。

上司によって成果主義的に偏ったりプロセスも評価したりといった差があると、部下としては不公平だと感じてしまいます。きちんと自分の仕事が評価されているのか?」という不安感があると、仕事への意欲が下がる原因となります

テレワークマネジメントを成功させる3つのポイント

今後も多くの企業でテレワーカーと出社者が混在する、いわゆる「まだらテレワーク」の職場が増えていくと予想されます。では、テレワークマネジメントの課題をどうしたら解決できるのでしょうか。テレワークを成功に導く3つのポイントをご紹介します。

①会社と従業員が目標を共有する

まず全社の目標を設定し、それに紐付けて部門や個人の目標を設定、共有しましょう。

そのためには、まずマネジャーが従業員に経営方針(ミッション、ビジョン、バリュー)を伝え、それがチームではどのような目標に落とし込まれたかを具体的に説明します。

会社やチームの目標と個人目標がどう紐付いているのかを可視化できると、自身の実績がどうチームに影響があって、チームの実績がどう会社に影響したのか確認できます

そうすれば、モチベーションが低下しがちなテレワーク環境下でも、従業員は企業が何を目指し、自分の業務がどんな結果につながるかを意識しやすくなります。オンラインツールを使ってこうした情報の共有を行えば、孤独感や疎外感などに悩まずに済みます。

また、目標はテレワーク前提にした「達成基準」と「具体的な行動計画」を明確にしましょう。具体的な行動計画とは、「いつまでに何をするか」です。上司と部下で認識の違いがないよう、あらかじめ擦り合わせておくことが大切です。

テレワークでは成果をアピールする場面は少ないため、部下は「成果を認めてもらえないのではないか?」というを不安を抱きがちです。そのため、部下がやるべき業務を具体的にした目標設定することが重要です。

 

 

②こまめなフィードバックと3ヶ月単位での評価

目標設定後は進捗状況の把握が欠かせません。慣れないテレワークでは、計画通りにいかないことも出てくるでしょう。そのため、日報などを通じて上司がこまめにフィードバックを行い、必要に応じて調整を加えても良いでしょう。

上司のフィードバックは、状況確認やアドバイスだけではなく、「期待しているよ」「頑張ってくれてありがとう」などと期待や感謝も伝えるようにしましょう。テレワーク中のコミュニケーション不足解消にも役立ちます。また、手厚いサポートが必要な新人に対しては、短時間でもよいので顔を合わせたオンラインMTGで、きめ細かいフォロー体制を作りましょう。

こまめに行うのは、目標管理においても言えます。従来の目標管理は、半年〜1年の期間で各自の設定した数値目標を追っていき、達成か未達かで評価するスタイルでした。しかし、テレワーク環境下においては、3ヶ月単位など頻度を増やして進捗確認と評価を行いましょう

 

 

③メンバーの自律を促す「自律支援型マネジメント」を行う

上司が部下に細かい指示・管理をする従来型の直接支援型マネジメントは、テレワーク環境下においては難しいのが現状です。大切なのは、日々何をしたのかという細かなタスクを管理することではなく、「目標に向けて進捗しているか」ということ。

そこで、いま行うべきは自律支援型のマネジメントへの転換です。「会社に決められたことをしなければならない」というスタンスから、「目標に向かって自ら職務設計をする」という意識を持ってもらうのです。

そのためには、自律的に働けるよう必要な情報を提供して仕事を任せたり、部下の心の支えになろうとしたりすることが大切です。こうしたマネジメントこそが、テレワーク時代におけるマネジャーの重要な仕事となります。

 

自律支援マネジメントを成功させるコツは「自己決定感」と「有能感」

「自己決定感」をもたせる

物理的に距離が離れているテレワークでは、管理型のマイクロマネジメントは難しくなりました。そのため、従業員にはこれまで以上に自分で判断して仕事を進めてもらう必要があります。そこで必要なのが権限の委譲です。

あらかじめ行動目標、いわゆる山の頂上だけを決めておいて、登り方は部下に任せるのです。仕事の決定感を持てると、「やらされている」から「自分で決めてやっている」に変換され、自律的な行動を引き出すことができます

そうすれば、より前向きな気分で仕事に取り組めるだけでなく、今後の可能性も見出すことにもつながります。また、思い切って大きな裁量を与えて仕事をさせてみるのも、従業員が「自己決定感」を感じるためのひとつの方法です。

最初は権限を委譲するのが怖いかもしれませんが、勇気を持って任せないと部下は育ちません。任せてみたけれど頂上に到達できなかった場合は、違う方法を考えればよいのです。

 

「有能感」を感じてもらう

有能感とは、何かを成し遂げて周囲に影響力を持ちたい、そして影響を与えて何かを得たいという欲求です。上司が「ありがとう」「おめでとう、よくやった!」といった声かけをしないと、部下は有能感を感じることができません。

ぜひ、今日の業務報告から声がけをしましょう。声かけが習慣化すれば、部下も自分の仕事に自信を持つことができるだけでなく、部下とのコミュニケーションも活性化されること間違いなしです

 

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